ルースキー・スヴェニール・復活祭卵-1

 「ルースキー・スヴェニール・パスハリヌィエ・ヤイツァ(復活祭卵たち)」を訳して公開ます。
 これでサラヴョーヴァの「ルースキー・スヴェニール」三部作を訳し終わることになります。
 著作権上の了解を得ていることは、前2作と同じです。

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表紙です

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扉絵です。


 ところで、三部作の内本書だけは「Пасхальные яйца」と、複数形になっています。
 ところが本書の英語版は「Easter egg」と単数形です。一寸気になるのですが、ロシア人と接する機会が皆無の地で、働きながら余暇を生かして訳す立場では、今のところ調べる方法がありません。取り敢えず「気になる」と指摘して次に進みます。

 次に復活祭卵の訳語について書き加えます。
 今の日本人は「復活祭卵」より「イースター・エッグ」の方がわかりやすいかも知れません。
 原書名「パスハリヌィエ・ヤイツァ」の「ヤイツァ」は「卵」の複数形、「~ヌィエ」はロシア語の名詞を形容詞化して、中性名詞複数形を修飾する形にする変化語尾、というわけで問題は「パスハ」という部分です。
 「パスハ」という音は、ユダヤ教の「過越祭」を意味する「ペスハ」からギリシャ語を経てロシア語に入ったと考えられます。そして「イースター」はキリスト教以前のゲルマンの習慣との習合が見られると言います。こちらは、ウィキペディアの関連項目で調べることができますので詳述しません。
 本書では、ロシアの復活祭卵に、キリスト教以前のスラブ民俗の習慣との習合に触れる部分があります。
 乱暴に言い切れば「復活祭」と日本語に訳せるキリスト教の習慣を表す語は、音を辿れば「イースター」系と「パスハ」系になるのです。

 少し話がそれますが、日本人は紀元前後を表すのに平気で「BCとAD」を使います。
 あるエイシストは、「ADはキリスト教信者の言葉だから自分は使わない。自分はキリスト教徒の歴年法という意味でCEを使う」と言いました。
 CEは、「Common Era」又は「Christian Era」の頭文字です。
 本文を書いている現在は、日本語で西暦2011年10月15日と書きます。
 これは「神の2011年目=AD2011年」という意味ではなく、「キリスト教が世界で使っている暦法による2011年」という含意になります。言い換えれば「私は信じないけど世界中が使っているし、ややこしいからそれで良いよ」という寛容の含意です。

 同じような思考過程を経て、「『イースター』は使わない方が良い」、「『パスハ』は通じにくい」、「『復活祭卵』なら漢字の組合せで日本人にわからないわけではないし、突き放した含意が表せるのではないか」と考えたのです。
 というわけで、本文では「パスハリヌィエ・ヤィツォ」に「復活祭卵」という訳語を使うことにしました。

 以下本文です。


最近(1997年頃)の事情
(本文に見出しをつけてみました。原書にはありません。以下同じく緑色の文字で示します。)


 復活祭卵は、多分マトリョーシカに次いでよく知られたロシアの記念品でしょう。
 最近(1997年原書出版当時)の復活祭卵に対する関心の高まりは、約70年に及ぶソ連時代に、それが違法状態におかれていたという独特の事情によります。ソ連時代、昔の復活祭卵は色々な美術館に秘蔵されていて、観光客が見る機会は稀でした。この間、キリストの復活祭に芸術的に装飾された復活祭卵を交換する、いにしえの伝統は姿を消していたのです。

 1980年代後半、私たち(ロシア人)は、忘れていた習慣や儀式など、ロシア革命以前の伝統を取り戻し、復活祭卵をプレゼントし合うようになりました。
 ロシア内外の展覧会でも復活祭卵に対する関心が高まりました。
 例えば1990年に、ロシア国立歴史博物館所蔵の磁器製復活祭卵がイタリアで公開されました。続いて、クレムリンの博物館やニューヨークのフォーブス(Форбс)という雑誌社の画廊に保存されていた、ロシア帝室の特注でファベルジェが作った復活祭卵が、まずアメリカのサンディエゴで、続いてモスクワで公開されました。

 カルル・グスタヴォヴィチ・ファベルジェ( Карл Густавович Фаберже, 1846年~1920年)は、ロシア、インペリアル・復活祭卵でよく知られたロシアの宝石商で、会社経営と同時に高度な技術で復活祭卵のみならず、様々な工芸品を作りました。彼は生没年からわかるように1917年のロシア革命を経験しています。革命後亡命し、スイスで永眠しました。

 また、1992年に、国際・聖セルギー協会は、中央芸術家会館でセルギー・ラドネジスキー(Сергий Радонежский、1321~2年頃~1322年)を讃える復活祭卵の展覧会を催しました。

 セルギー・ラドネジスキーについては、筆者ブログを御参照ください。 

 かつて皇帝ニコライ二世がロマノフ王朝300年記念として、母である皇后マリア・フョードロヴナに贈った、ファベルジェ製の「冬の卵」と命名された復活祭卵がジェノヴァの「クリスティ」というオークションで、750万ドルで落札されるというセンセーショナルな出来事もありました。

 1993年12月には、復活祭卵を愛好する収集家、作家、芸術家が、卵を意味する「オヴォ」というラテン語を使って「オヴォ・アート(Ovo art)」という名前の同好会を作りました。同好会はロシアの伝統的な復活祭卵を、製法を含めて、復活させることを使命としています。

 本書は、本文12頁の後全てが画像になっています。
 あまり長くないのですが、それでもいくつかに分てアップロードしなければなりません。
 というわけで、ここでは、原書の順序を崩して、画像を貼り付けます。

 まず本書末尾部分、国際卵愛好クラブ「オヴォ・アート」所蔵卵の画像とその近辺の画像を貼り付けます。画像番号はそのまま原書のページです。



83
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 ここまでまとめて
G.ネウストロエヴァ、産地=モスクワ
復活祭卵、1994年
ブロンズ、細密画、風景、金線細工、彫金、真珠、石、ラッカー
国際卵愛好クラブ「オヴォ、アート」モスクワ

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G.ネウストロエヴァ、産地=モスクワ
卵「聖母」1991年
木、ミニアチュール、金箔、より糸、ビーズ、ラッカー、
国際卵愛好クラブ「オヴォ、アート」モスクワ

V.セルゲイチク、産地=モスクワ
折り畳み式イコンの卵 1993年
木彫、浮き彫り、ラッカー、
国際卵愛好クラブ「オヴォ、アート」モスクワ

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V.セルゲイチク、産地=モスクワ
卵、「クリスマス」1992年
木彫、浮き彫り、ラッカー
国際卵愛好クラブ「オヴォ、アート」モスクワ

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Y.グリゴーリィ、産地=モスクワ
卵「聖母」1995年
木、線条細工、エナメル、ラッカー
国際クラブ「オヴォ、アート」モスクワ

G.ネウストロエヴァ、産地=モスクワ
卵「慈愛」1992年
木、ミニアチュール、箔、ラッカー
国際卵愛好クラブ「オヴォ、アート」モスクワ

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S.アキモヴァ、S.アキモフ、産地=モスクワ
卵「マドンナ」1995年
磁器、上絵、
作家蔵

S.アキモヴァ、S.アキモフ、産地=モスクワ
卵「昇天」1995年
磁器、上絵
作家蔵

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V.モイセィエンコ、産地=ヴェルビキ
卵「聖アレクセイ二世の肖像」1996年
磁器、上絵
国際卵愛好クラブ「オヴォ、アート」モスクワ

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V.モイセィエンコ、産地=ヴェルビキ
卵「アルトフィエフの十字架高揚寺院」1996年
卵「ソコーリニキのキリスト復活寺院」1995年

A.アブラモヴィッチ、産地=ヴェルビキ
卵「ハモフニキのニコライ寺院」
磁器、上絵
国際卵愛好クラブ「オヴォ、アート」モスクワ

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V.モイセィエンコ、産地=ヴェルビキ
復活祭卵、1994年
磁器、箔置き      gilding
個人像、モスクワ

Y.ソロヴィエフ、産地=モスクワ
復活祭卵、1995年
木、金銀線細工filigree、エナメル、ラッカー
国際卵愛好クラブ「オヴォ、アート」モスクワ

93
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V.モイセィエンコ、産地=ヴェルビキ
復活祭卵、1996年
磁器、上絵、金箔
国際卵愛好クラブ「オヴォ、アート」モスクワ

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E.マヴリュトヴァ、産地=ウファ
装飾卵、1996年
木、着彩
作家蔵

N.グリンベルグ、産地=モスクワ
驚きの復活祭卵、1995年
張子、Velvet, brocade、ビーズ、真珠、エナメル
作家蔵

N.グリンベルグ、産地=モスクワ
復活祭卵、1994年、1995年
張子、ベルベット、綾布 金襴brocade、ビーズ、真珠、筒ビーズbugle beads, 三つ編みbraid
作家蔵

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