ディムカとヴャトカ(キーロフ)

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 キーロフ地方特産、ディムカ玩具です。
 ディムカについては、訳者が海外のサイトを、管理者の了解を得て日本語で作り直したページがあります。
 下にいくつかリンクを貼っておきますので、ついでに御覧いただければ幸いです。

 ロシアの工芸=色々な産地に関する海外サイトを訳した、筆者のカパーページを兼ねたページ

 ドィムカ=筆者が訳してオリジナルページに似せて作ったページ

 上の写真は、セルギエフ・パサードの玩具博物館のページから持ってきました。
 この地方独特の玩具です。

 キーロフ(Киров)は、セルゲイ・キーロフ(Сергей Миронович Киров 1886年~1934年)という革命家に因んだ名前です。

 暗殺されなければスターリンの後継者になり得る立場にあったとか・・・・

 その力を恐れたスターリンが暗殺の影にいたとか・・・・
 いろいろ噂のある革命家です。

 キーロフは、フルイノフ(Хлынов)、ヴャトカ(Вятка)と名前が変わりました。

 まだロシアになる前のことですが、12世紀末に、ノヴゴロド共和国の商人がフルイノフの砦を作りました。
 1374年に、その名前が記録されています。
 その後、1489年に、イワン三世の遠征でモスクワ大公国に併合され、辺境防衛拠点になりました。
 1781年フルイノフはヴャトカと改名され、1796年、エカチェリーナ二世の地方行政改革でヴャトカ県が新設され、ヴャトカはその県都になりました。
 ヴャトカは辺境で流刑地でもあったのですが、19世紀にシベリア鉄道が開通すると、要衝として工場などが集まり始めました。
 また、1917年~21年、革命後の内戦では、要衝として、激戦地になりました。
 その後、1934年12月1日に革命家キーロフが暗殺された後、12月7日に、キーロフを記念してキーロフと改名されました。

 1991年の政変で名前をヴャトカに戻す話があったのですが、立ち消えになっているそうです。




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 さて、キーロフのスヴェニールというマトリョーシカ工場見学を終えて、「クレムリン跡を見学しましょうか」と、高台を走っている途中です。

 キーロフのクレムリンは、ソ連時代に破壊されて、教会だけが残っているそうですが・・・・

 興味深い建物が目に入りました。

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 「ディムカ玩具はこちら」
 という看板です。

 ところで、この「дымка」を日本語でどう書こうか、ずっと迷い続けてきました。
 最初の文字は、アルファベットで書くと「D」ですから、カナで書けば「ドゥ」になるはず。
 次の文字がロシア語独特の文字で、カナで書けば「ウィ」という母音。
 舌の中央を窪ませて、緊張させて、喉の奥の方で「ウィ」と発音します。
 あとの3文字はアルファベットと同じ、「ム」「ク」「ア」ですから、続けて書くと「ドィムカ」で良いと思っていたのですが、耳で聞くと「ディムカ」に近い音に聞こえます。
 だから、ここからはディムカと書くことにします。

 というわけでここは「ディムコフスカヤ イグルーシカ」と書きます。

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 建物を斜め方向から写してみました。
 ポイントは、右下にいるバラットさんの足、あるいは左に停まっている車の高さと、階段の道路に面する高さ。
 この高さ、飛び下りることはできても、昇るのは困難です。
 だから、横から回り道。

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 改めて、建物を正面から紹介します。
 道路から、最初の段の高さを無視すれば、普通の建物です。

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 入り口を入ると、壁にこんな作品が展示してあります。
 ディムカのデザインです。

 そのまま、人気のない階段を4階まで上がります。
 4階に広い売店があります。

 筆者の場合、お土産に何度も安いマトリョーシカを持ち帰りましたから、何かの話題に、ディムカ玩具を買って帰ろうかと思ったのですが、ディムカは結構高いのです。
 数百円のものもありますが、高いのになると数万円します。
 おまけに、素焼き土器にテンペラで着色したものですから、壊れるのも心配。
 記念にひとつだけ購入しました。

 売店の女性
 「日本からディムカを見に来た」
 と、言いますと
 どこかへ電話をします。
 そして
 「スパシーバ」
 と、電話を切りました。
 誰かに、何かを、お願いしたようです。

 『もしかしたら』
 と、期待していたら
 期待通り

 「2階の工房に作家が来ているから紹介します」
 ということになりました。

 時間外だったのですが、早目に来ていた職人さんが承知してくれたようです。

 筆者が空港に着いた時のインツーリスト・オフィス・職員の対応を読まれましたか?
 そう、店を閉めて、案内してくれるのです。

 このお店では、厚い木製扉を閉めて、7~8センチメートルありそうな、大きな鍵をかけてしまいます。

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 左側の腕組みをしている、青い服装の女性が、案内してくれた店員さん。
 右のピンクの服装が、目の前で鶏を作ってくれた、作家のベーラさん。

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 粘土は、ビニル袋に入れて、机上にあります。

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 手許です。

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 彼女の周りには、様々な段階の作品が並んでいます。
 毎日、少しずつ作っているのでしょう。
 後ろにあるのは800度程度で素焼きしたという作品。
 手前にあるのは、素焼きの上にカゼインで練った白亜で下塗りした作品。

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 こちらは、部分的に着色が進んでいます。

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 こちらは、粘土で形作って乾燥させている段階の作品。
 乾燥の度合いに応じて、色が明るくなっています。

 参考までに

 粘土は、土中の微生物とその死骸が土の粘りを出します。
 だからカラカラに乾燥させると、水で練っても、微生物がはびこるまで粘りません。 
 逆に、できた作品は、乾燥する段階で微生物が死にますから、粘りが無くなります。
 この時点で破損すると、もうくっつけることはできません。

 完全に乾燥してから、素焼きします。
 600度くらいで焼きますと、土中のガラス質が柔らかくなって、土を固定します。
 「ポン」や「砂糖入りポップコーン」のようなものです。
 熱すると、溶けた砂糖が膨らんだ米やコーンをくっつけます。
 焼き物も、熱で柔らかくなった土中のガラス成分が土粒子をくっつけて硬くなるるのです。

 もっともっと高温で焼くと、やがて土中のガラス成分が表面をくるんで、耐水性が出ます。
 自然釉です。

 800度という温度ですが、これは、自然釉が出るほどではありませんが、後で人造釉薬をかけるとすれば、少々温度が高めです。
 上の理屈で、吸水性が低下して釉薬の乗りが悪くなるのです。

 でも、ここの玩具は、カゼインで白亜を塗る、素焼き着色ですから、問題がないのかもしれません。
 また、着色して、そのまま作品にするなら、高温で焼いた方が、堅牢です。

 余談ですが、青い衣服の店員さん。
 筆者が購入したディムカ玩具を、
 口紅を拭き取って、
 「かまいませんか」
 と、断ってから、
 試し吹きをして、音が出ることを確認しました。

 全てがそうではありませんが、ディムカ玩具は笛になっていることが多いのです。

 そうしてから、包装紙を丸めて玩具に巻き付けてから包装します。
 これなら、多少の衝撃では割れないでしょう。

 ところで、「дымка」(ディムカ)の「дым(ディム)」は、「煙」です。
 また、「дымко、дымка(ディムコ・ディムカ)」は「霞」

 今、出展を示せませんが、遥かな過去に、この都市名の元になったヴャツカ川から立ち上る霞がディムカ玩具の語源だと、どこかで読んだような気がします。
 「霞」だから、穏やかな色調かといいますと、全く逆、赤、黄、緑、青などの原色に金をあしらう、とても派手な色使いです。

 最後に、そのヴャトカ川の写真を示します。

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 キーロフ市川から市外へ出るヴャトカ川にかかった橋を写しました。
 右にある標識は「ヴャトカ川」という表示です。

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 ヴャトカ川(Река Вятка)です。

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 橋からキーロフ市を振り返りました。
 モスクワから1000キロメートル強、
 簡単に来られるところではありません。

《付記》
 ロシア語の固有名詞は、名詞を修飾するとき形容詞に変わります。

 例えば、「ニジニ・ノヴゴロド( Нижний Новгород)」という都市名は、「ニジニ・ノヴゴロド州」と、「州(область)」を修飾するとき「ニジェガラツカヤ・オーブラスチ(Нижегородская область)になってしまうのです。
 「州(オーブラスチ)」を日本語に訳して、その前の部分をそのままカタカナにすると
 「ニジェガラツカヤ州」
 になります。

 もっとややこしいことに、州の中に「地方」「地区」などと訳すしかないような、「ライオン(Район)という行政区分があって、この場合、ニジガラツキー・ライオン(Нижегородский Район)になります。
 オーブラスチが女性名詞、ライオンが男性名詞だからです。
 日本語の都道府県名は形容詞化しません。
 だから、形容詞変化している名前を元の名詞に戻して、「ニジニ・ノヴゴロド州」「ニジニ・ノヴゴロド地方」にしなければならない。
 ネットサーフィンで教えられて、慌てて自サイトを書き換えたことがありました。

 ところで、ヴャトカ(Вятка)の話です。
 この語は、形容詞化すると、ヴヤツキー(Вятский=男性形)、ヴャツコエ( Вятское=中世形)、ヴャツカヤ(Вятская=女性形)と変化します。

 問題は、「т」と「к」の間に「с」が入ること。
 カナ表記に当たって「ヴャトカ」か「ヴャツカ」かという問題です。

 名詞なら「ヴャトカ」、形容詞なら「ヴャツキー」で良いではないか・・・・
 と割り切れば単純なのですが・・・・
 筆者の耳には、名詞も「ヴャツカ」に聞こえるのです。

 そもそも母音のない「ト」を表す日本語はないのですから、耳に聞こえた通り「ヴャツカ」でも良さそうに思います。
 というより、しばらく「ヴャツカ」と書いてきたのです。

 でも、ネットサーフィンをしたり、辞書を調べたりすると、どうも「ヴャトカ」と書くようになっているらしい。

 しばらく「ヴャツカ」と書いてきて、名詞と形容詞の違いを表現するために、名詞部分を慌てて「ヴャトカ」と書き改めた次第です。
 
 ややこしい話でした。




 
 

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    Excerpt:  これは、ささやかな記念のページになるでしょう。  本文は、ニジニ。ノブゴロドのアクチャブリスカヤ・ホテルから、ホテルの無料接続サービスを使って書き込んでいます。  写真は、ホテルの窓から見えるボ.. Weblog: ROKO racked: 2010-09-15 17:51