プーシキン美術館

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 日本でも有名なプーシキン美術館の入り口です。
 (本文は2008年8月9日(土)に作成し、その後部分的に手を加えてきましたが、2010年8月17日(土)に再度訪問し、同月30日(月)に新しい情報を加えました。)

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 2010年8月17日(火)
 前庭にこんな群像ができていました。
 レンブラントの夜警です。

 ところで、「プーシキン~ミュージアム」は、モスクワにいくつあるか御存知ですか?

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 これは、西隣の西洋画ギャラリー、これもプーシキン美術館。

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 これは、東側の別館。

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 これは、東側、奥の別館。

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 というわけで、美術館の提供する地図を紹介しておきます。

 ところで、これらの、美術館コンプレックス(複合体)は、詩人のプーシキンとは関係ありません。この美術館の名前は、正式には、「美術のためのプーシキン名称美術館」というような名前で、日本のサイトを見ると「プーシキン記念美術館」というような訳もあります。
 つまりプーシキンは名前を借りているだけです。
 そして近くに詩人プーシキンに関係する資料を展示しているプーシキン博物館もあるのです。
 どちらも「ムゼイ」、英語なら「ミュージアム」ですが、筆者は美術館と博物館で区別することにしました。
 このへんの事情は稿を改めて書くことにして、ここでは、本館奥まったところにある古代ギリシャ~ルネッサンスのレプリカ彫刻を紹介します。

(青字部分は2009年10月24日と2010年8月30日に加筆しました。)


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入り口にこの博物館を作ったツヴェターエフの像があります。

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クーロスです。
 古代ギリシャ彫刻、理想的な調和と安定を求めるクラシック様式に先立つ、アンバランスな、硬い不自然さを感じさせる、アルカイックという様式の作品です。
 日本美術史なら飛鳥時代に当たります。興味ある人は法隆寺釈迦三尊を参照してください。これもアルカイック様式です。

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 デルフォィ博物館にある、BC475年頃つくられた“御者の像”のレプリカです。
かなり形が整ってきますが、まだ表現に硬さが感じられます。

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 ポリュクレイトス(前480~)の「ドリュフォロス(槍をかつぐ人)」のレプリカです。
理想的な調和を獲得したとされる、クラシック様式を代表する作品です。
 インターネットでもこの画像はなかなか手に入らないのです。


 しかも、彫刻は絵画と違って、撮影の仕方で雰囲気が変わるから、写真に著作権が発生するおそれがあります。
 作者没後70年を経過したからと言って、そのまま写真を借用できないおそれがあるのです。レプリカとは言え、この画像が手に入ったことは、とても嬉しいことでした。

 因みに、2009年10月段階、グーグルで、「槍を担ぐ人」を画像検索すると、このページが最初の方に出るようになりました。しかも周辺の画像は古代ギリシャ、クラシック(古典)様式を代表する「槍を担ぐ人」とは無関係なものです。
 もっとも、「doryphoros」で検索すると、海外のサイトでオリジナル画像をみることもできます。(念のために)


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ミュロン(Myron、紀元前480年頃~紀元前445年)の円盤投げのレプリカです。
 オリジナルはグリュプトテーク (Glyptothek) というミュンヘンにある古代彫刻専門の美術館にあります。

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 ラオコーン群像です。1506年にネロの宮殿の跡地で発掘されたものです。
クラシックの理想的な調和様式を超えて、激しい動きが表現されています。
 オリジナルはバチカン美術館のベルヴェデーレの中庭にあります。
 バチカン美術館は美の愛し方を知っているイタリアの美術館ですから、写真撮影可。
 筆者は、バチカンのオリジナル、ウフィッツィのレプリカを撮影した画像を持っています。でも、どちらも事情あって、それほど良い画像ではなかったのです。
 こんな良い条件で撮影できたのは、やはり喜びでした。

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 ヴァチカン美術館のラオコーン群像です。

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 ウフィッツィ美術館のラオコーンです。
 3つのラオコーンの比較のページは別に作りました。

 また、2009年10月19日、ネットサーフィインをしていてYUMMYさんという方のブログで、ロードス島にあるラオコーン群像の画像を発見しました。 この画像を見る限りロードス島の群像は、法王レオーネ10世が作らせた、ウフィッツィ美術館にある模刻よりも、腕のまがり具合や、蛇の噛みつく部分が、ヴァチカンにあるオリジナルとされている像に近い形をしています。ラオコーン群像は右腕が欠けた状態で発見されたのですが、後にウフィッツィのレプリカのように、右腕を高く伸ばした姿がオリジナルだと誤解されてきました。というわけで、オリジナルに近い形が、このような模刻の流行ったルネッサンス時代のものとは考えにくいでしょう。

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 プリマポルタのアウグストゥス(Augustus of Prima Porta)です。1863年にプリマポルタのリヴィアのヴィラ跡で発見されました。
 これも、オリジナルはバチカン美術館にあります。
 オリジナルと少し違うのは、槍を持っているところです。

 ただし、長生きはしましたが、体力にも軍事にも自信がなく、戦争は、ほとんど友人のアグリッパに任せたというアウグストゥスがこんな槍を持っていたという解釈は如何なものでしょうか。(2010年8月30日加筆)

 繰り返しますが、イタリアは美術愛好精神ある国ですから、写真撮影は自由。
 日本のお寺を拝観して、写真撮影禁止の札を見る度、この国は美術愛好精神が育っていないと悲しくなります。
 ついでだから、下にオリジナルも示します。
バチカンのオリジナルの展示方法では、上のような角度からは撮影できません。
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 いきなり時代は飛んで、ミケランジェロの、メジチ家の墓です。
 上がジュリアーノ、下がロレンツォです。
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 メディチ家から選出されたローマ法王、レオ10世が、ミケランジェロに作らせた、ヌムール公ジュリアーノとウルビーノ公ロレンツォの墓碑彫刻です。
 この2枚の写真も、オリジナルは、素人の力では、このように撮影することはできません。次に私が現地で撮影したオリジナルの画像を示します。
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 素人がきれいに撮影できない理由は2つあります。
 ひとつは向かい合っているジュリアーノとロレンツォの距離が近すぎて、素人のカメラでは全体を画面に納められないのです。
 もうひとつの理由は、墓所ですからとても暗いのです。
 手振れもあって、綺麗に撮影するのは困難です。

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 ミケランジェロのピエタです。

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 ダビデ像です。これも、当然ですが、オリジナルをこの角度から撮影することはできません。プーシキン美術館だから、2階から見下ろすように撮影できるのです。
 2階から見下ろしても意味はないのですが、話題として紹介しておきます。

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 このダビデ像には色々な面白い話があるのですが、ここでは、2つだけ紹介しておきます。
 もともとこの像は、フィレンツェ市庁舎前の広場に展示されていました。
 でも心ない人による破壊や風化から守るために1873年にアカデミア美術館に移されました。像の頭の上のドームには上がれません。
 なお、市庁舎前には1910年から複製が置かれています。

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 西側の美術館でよく見かける柩の浮き彫りもいくつか紹介されていました。

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 最後に、この写真を撮りたいばかりに2年続けてプーシキン美術館に通ったという写真です。ついに撮影することができました。
 サモトラケのニケと、ミロのヴィーナスと、瀕死のガリア人が並んでいます。
 レプリカ美術館ならではの展示です。

 芸術や文化を愛好する精神は、親しむことから始まります。
 そんな意味で、徳島にある大塚美術館の、世界の美術作品をレプリカで展示するやりかたは注目に値します。
 画像が簡単に手に入らない、写真撮影を認めない、そんな日本のやりかたでは、伝統文化に親しみ、愛好し尊重する精神は育たないと思います。

 2010年8月17日(火)訪問時のエピソードを書き加えます。

 ブタ・ペスト美術館からの特別企画展が開催されていました。
 おかげで、中心部分は撮影禁止。

 中央階段上のギャラリーにも、招待作品が並んでいました。


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 企画展のおかげでしょうか、単に美術館のスケジュールでしょうか、
 先に紹介したレプリカ・ルームは締め切りでした。
 締め切りなのに、覗ける。
 企画展のための撮影禁止札のある、締め切り空間への扉近くの女性職員に、2カ所で声をかけました。
 「向うの部屋は写しても良いですか?」

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 こちらの女性は、OKでした。
 そればかりではありません。
 入室遮断の綱から身を乗り出して
 「ニケを撮影しなさい」
 と、助言。

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 御好意に甘えて、
 というより、嬉しい話を紹介する資料として、これ以上身を乗り出すと倒れる、ぎりぎりまで身を乗り出して撮影しました。

 全く、別の部屋ですが、同じようなシチュエーションで、
 こちらの女性は、駄目でした。
 当然写真も紹介できません。

 さらに、つまらないエピソードをいくつか・・・・

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 アッシリアの有翼人面雄牛(ラマッス)のレプリカです。
 「これは、どうして5本足なのでしょう」
 という、美術鑑賞指導のネタです。

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 横から見れば4本足。

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 前から見れば2本足。

 そう、壁の2面に2つの浮き彫りが張りついて、部分的に丸彫りになった彫刻なのです。

 話題はもっとトリヴィアル(trivial=瑣末的)で、

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 2007年に無かった左足を、いつ作ったのでしょう
 という話です。

 企画展以外、閉鎖していない常設空間は撮影可

 折角だから、話題提供の意味で、何点か紹介しておきます。

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 筆者の好み。
 オランダ静物画の巨匠、ヘーダです。

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 英語で、静物画のことを スティル・ライフ(still life=まだ生きている=この訳は、強引でしょうか)
 フランス語やロシア語では、ナチュール・モルト(nature morte=死んだ自然)
 と、言います。
 一見、全く逆の表現なのが面白い。

 ラテン語の「メメント・モリ」は、「死を想え」という意味で、
 このテーマは死に神や骸骨と人間を対比して表現されることがあるのですが
 静物画も、同じような寓意があったと聞きます。

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 食卓に至る少し前?
 日本人は、こんな絵、
 嫌でしょうね。

 お口直しに

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 風景画です。
 厳格な形で遠近を表現する、パースペクティブの例です。

 このような絵画空間をイリュージョナルな絵画空間と言います。
 本当にあるような錯覚を起こす絵画空間という意味で、写実絵画の基本です。

 広い地球上の、ほんの小さな、しかもイスラームに比べて遅れた地域だったヨーロッパにだけ、こんな写実絵画が発生したという見方は、興味深くありませんか?

 
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 因みに、絵で説明するとき、あまり写実的でない方が、説明がわかりやすい。
 そんなケースも少なくない。

 写実絵画以前の、説明のための、図のような絵画
 この絵画空間をイコノグラフィックな空間と呼びます。
 ヨーロッパ以外の文化は、圧倒的にこんな絵画空間が多いのです。

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 ところで、中学校で、こんな、イリュージョナルな空間について学習しましたか?

 とある、合衆国の人に尋ねたら、遠近法は、実技も含めて社会科のルネッサンスのところで学習したそうです。

 ある医大の先生の話を伝え聞きました。
 解剖して、顕微鏡で見ても、学生は、
 「それを絵に描けない」

 美術科でも社会科でも理科でも良いのです。
 日本人は、多分、しっかり学習していない。
 学習していないことが問題だと思います。

 そして美術系に進学する生徒は、突然デッサンや精密描写を求められます。
 入学後彼らは、写実についてあまり学習しない。
 そして、写実の意味を理解しなかった先生が誕生します。
 

 

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この記事へのコメント

YUMMY
2009年10月19日 19:53
こんにちは、コメントありがとうございました。
レプリカ美術館! 面白いですね。行って見たい!

ラオコーン像はやはりレプリカがたくさんあるのですね。。
ヴァティカンのがオリジナル…というのが絶対だといいのだけど…。
私のブログでよければ是非紹介してください。
軽いのりの記事なのでお恥ずかしいですがww
ミツ
2013年03月27日 15:26
ブログの写真、借りれないでしょうか?
2013年03月31日 04:15
コメント頂き、又写真に興味をお持ちいただいたようで、有難うございます。
本ブログの写真は基本的に管理人が撮影したものですので、著作権も管理人に属しますが、管理人としては、Some rights reserved 状態で御利用いただいて結構かと考えています。
どのレベルにするかは深く考えていないのですが、取り急ぎ一番ゆるやかな「表示(CC BY)」レベルで結構です。
よろしくお願いします。

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  • 「プーシキン美術館」について

    Excerpt: 「プーシキン美術館」について 写真に興味をお持ちいただき、コメントをいただき、ありがとうございます。 本ページの写真は全て自分で撮影したもので、著作権は私に所属します。 著作権については、あまり深.. Weblog: ROKO racked: 2013-03-31 04:30